大阪から移り住んで3年。ヨーガ教室「JOYYOGA(ジョイヨガ)」を 主宰する東夏海さんがこの町で叶えたいこと。 大阪から移り住んで3年。ヨーガ教室「JOYYOGA(ジョイヨガ)」を主宰する東夏海さんがこの町で叶えたいこと。

写真・文=赤司研介(SlowCulture) 写真提供=JOYYOGA

まちのシンボル・高取城跡のある高取山のふもと、穏やかな里山の風景が残る「上子島(かみこしま)」という集落に、ヨーガ教室「JOYYOGA(ジョイヨガ)」はあります。

主宰するのは、2017年に大阪からこの土地へ移り住んだ東夏海(あずまなつみ)さん。

 

夫である員史(かずふみ)さんのご実家の建物をリノベーションした自宅にヨガスペースを設け、2018年10月に教室を開業。呼吸に合わせたポージングを通じてインナーマッスルを鍛えることで、健康な心と体を取り戻す人が増えてほしい。そんな願いと共に、日々レッスンを行っています。

インナーマッスルを鍛えることで、姿勢が良くなって、スタイルも良くなります。でも、それは体の外側に表れる副産物みたいなもので。一番大事なのは、内側の筋肉が鍛えられることによって、骨が本来あるべき位置に戻っていくこと。

 

それによって、内臓が本来の位置に収まり、呼吸が深くなるなど、知らずのうちに体の機能が向上し、それが健康につながっていきます。スタイルのためだけでなく、健康のためにヨガをする人が増えてほしいなと思ってやっています。

※2020年4月現在、「JOYYOGA」ではコロナウィルス感染拡大の可能性を考慮して、対面レッスンをすべて自粛し、Web会議サービス「Zoom」を利用したオンラインレッスンを実施しています。

都会にはない季節の香り

うわ、めっちゃ空気が違う。なんかめっちゃ香る〜って思ったんです(笑)

コンクリートに囲まれた大阪の市街地で育った東さんは、初めて高取町を訪れたときに、空気の違いを感じたと言います。“季節が香る”その感覚は、このまちで暮らしていく決断を大きく後押ししました。

 

思い返してみたら、高校は田舎にある学校で、寮から毎日3kmの道のりを自転車で通っていたんですけど、その時に「なんか田んぼってきれいな〜」って思ったりしていて、ずっと街で育ったんですが、当時から人工物じゃない、自然が織りなすものたちに心惹かれとったんですよね。

 

それから10年くらいが経って、30歳手前くらいで夫に出会って、山登りを教えてもらったらすっかり山に魅了されてしまって。「うわ、山すご〜い!」って。本気で長野に移住したいと思っていたんです。でも高取に来て「ここ最高やん!」てなりました(笑)

 

“最高”の理由は空気や香りだけではありません。市街地に出やすい立地も、その理由のひとつだったそう。

 

10分あれば街に出られて、20分あればショッピングモールがあって、40分あれば大阪の阿部野橋まで出られます。なのに家の周りではホタルも飛ぶんですよ、そんなん最高じゃないですか(笑)

 

長野からは大阪まで8〜9時間はかかるので、今ある人とのつながりを続けるのも難しくなってしまうし、ここからなら実家にも1時間ちょいで帰れるので、もし家族に何かあっても駆けつけられるから安心です。

街育ちだから気がついた自然

東さんは大阪で暮らしている頃、とある病院で看護師として働いていました。集中治療室に運ばれてくる患者さんの生と死に触れる毎日。常に神経が張り詰めた生活だったと当時を振り返ります。

ずっとピリピリして、ずっと自分じゃない何かに集中する生活を送っていました。そんな中で、夫に連れられ山に行くと一転、自分の命は自分で守らなきゃいけなくて、そうなると人って自分に集中するんです。

 

これがヨガに通じていて、自分に集中すると五感が冴えてくる。地面があるとそうなるんやと気がついて、だから暮らしの近くに土があるって大事やなと。都会に生まれなければ、そうは感じなかったかもしれません。

 

そんな東さんがヨガと出会ったのは、夫の員史さんに連れられ訪れたネパールでのこと。10kgを超えるザックを担ぎ、およそ200kmあるヒマラヤの山道の途中に立ち寄った町で、悲鳴を上げていた体を癒してくれたのが、現地で勧められたヨガだったといいます。

現地の先生に教えてもらう通りに、吸う息、吐く息、自然な呼吸を意識しながらストレッチをしたら、筋肉がめっちゃ伸びて、めっちゃ気持ちよかったんです。先生は小柄な男性の方だったんですけど、優しくておもしろくて、今もすごく影響を受けています。

 

日本に帰国後、東さんは早速ヨガ教室に通い始め、さらに凄腕の整体師との出会いを通じて整体も学ぶようになります。それまで看護師として学んできた西洋医学と、ヨガや整体といった東洋医学の知識や体感がつながり、それぞれがさらに深まっていったといいます。

 

ヨガに出会う前の私は猫背で引きこもりがちでした。でも、体がほぐれると心もほぐれるのか、体と呼吸が連動して心がクリアになって、疲れたはずなのにすっきりする感覚や、芯が強くなっていく感覚を覚えるようになります。

 

柔軟性があがると疲れにくくなって、リラックスできて、人にも会いたくなりました。そんな風に私を変えてくれたヨガの力をみなさんにシェアして、ほんの少しでも、その人がポジティブになるお手伝いができればいいなと思って、教室を始めました。

ピンピンコロリを増やしたい

自らを整えながら、経験をシェアしていくフェーズへ。東さんが一歩踏み出した根っこには、病院でたくさんの人の死を目の当たりにした経験がありました。

死に際って本当に十人十色で、家族に囲まれて幸せに亡くなる方もいるんですが、ネガティブな気持ちで悲しい亡くなり方をする人もたくさんいるんです。一方で山登りをしていると、とても元気なシニアの方に出会ったりして、やっぱり足腰が強い人ってポジティブなパワーが強いなって。

 

そういうことを目の当たりにしてきて、私は、もうどうしてあげることもできない状態から人に関わるよりは、私の年代や、もう少し上の年代に健康な人を増やして、変な言い方ですけど、健康なまま死ねる“ピンピンコロリ”を増やしたいって思ったんです。

 

幸せの素って、やっぱり“元気”なんちゃうかなって。元気な人を増やしたい、元気なおじいちゃんとおばあちゃんになりたい。それが、私がこのまちで叶えたいことです(笑)

 

「JOYYOGA」では、一人ひとりの体と心に即したガイドを目指しています。初心者の方から、パフォーマンスを向上したいアスリート、シニアの方、体に痛みのある方、わんぱくなキッズも大歓迎だそう。

体は、使えば使うほど蘇るというか、子どもの頃みたいになっていけるんです。もちろん、みんながみんなではないけれど、でも、最初は「絶対倒立とか無理!」と言っていたママさんが、一年後に「なっちゃん、ちょっと見てくれへん?」って、上着を脱いで、壁の近くに行って、逆立ちしよるんですよ(笑)

 

それを見たときに、私ね、心が震えたんです。この人たちがこんなに変わるんやったら、元気な人が増えるんやったら、私がんばるわって。私自身もまだまだ模索中ですけど、元気な人が一人でも増えて、その元気が次の誰かの幸せになって、たとえば旦那さんに、子どもに、優しくできたらすごい良いやんと思っています。

 

ヨガの根本はポーズをとることではなく、“自分の本質を見出すこと”だと、東さんは最後に付け加えます。

 

子どもの頃って、走れたとか、自転車に乗れたとか、逆上がりができたとか、めっちゃ嬉しかったじゃないですか? でも大人になったら、特にママになったら、新たに『これができるようになった!』ってことってあんまりないと思うんです。

 

そんなママが、努力して新たなことができるようになると、めっちゃいい顔になる。自信がついて、自分の本質に近づいていく。その喜びを伝えることもしていきたいんです。特に、体がかたいからとか、ヨガを遠くに感じてしまっている人にこそ来てほしいなと思っていて、そういう人たちに目を向けていただけるよう、楽しいレッスンを日々考えています(笑)

JOYYOGAのWebサイトはこちら

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ライター 赤司研介

編集者・ライター。当サイトの制作・編集を担当。1981年、熊本県生まれ。2児の父。東京の広告会社「CURIOUS」でコピーライターとしてキャリアを積み、2012年に奈良県宇陀市の農村地へと住まいを移す。一手間かかる“なつかしい暮らし”に大きな価値を感じ、2016年に「SlowCulture」として起業。以後「自然につながる編集・執筆」に取り組んでいる。編集ユニット「TreeTree」共同代表。奈良を日英バイリンガルで編集するフリーペーパー「naranara」編集長。奈良・奥大和の兆しを伝える「Local Life Journal」や大阪・泉北の魅力を届ける「PORTAL SENBOKU」などローカルメディアの編集も担当。そのほか、NPO法人「ミラツク」メディアチーム、Webマガジン「greenz.jp」ライターとしても活動中。